任意整理とは、簡単に言うと『賃金業者に、債務を返済可能な金額に減額することを直に交渉する』債務整理です。
任意整理は裁判所を通さないので「手続きが簡単」「周囲にバレにくい」など、債務整理の中でもメリットが多いのが特徴です。
そこで、今回の記事のポイントはこちらです!
- 任意整理で返済が楽になる!
- 任意整理のメリットとデメリット、手続きの流れまでご紹介!
ご自身やご家族の借金の状態を把握されていますか?
もしも、毎月の借金の返済に苦しめられているのであれば、一度は検討して欲しい任意整理。
詳しく解説していきますので、ぜひご覧くださいね。
任意整理のメリットとデメリット

借金で苦しんでいる人を合法的に救済するための制度が債務整理です。
債務整理の手続きは主に4種類あり、任意整理はその中の一つです。
下記は債務整理を比較した表です。
ご覧ください。

任意整理を簡単に説明すると、裁判所を通さずに『債務者と直接交渉』し、借金の利息分をカットや大きく減額してもらうための手続きをすることです。
基本的に元本の減額はされません。
しかし、過払い金のある借金については、元本の減額、または一部返金されることもあります。
任意整理のメリット
それでは、任意整理のメリットについて詳しく見ていきましょう。
任意整理のメリットは以下です。
- 賃金業者からの督促が止まる
- 家族や勤務先などに内緒で手続きがしやすい
- 財産を残せる
- 簡単な手続きで済む
- 職業資格の資格制限がされない
では、ひとつずつ解説していきますね。
賃金業者からの督促が止まる
返済期限が過ぎると、一般的にはまず、電話がかかってきます。
それから郵便による督促状から催告書(さいこくしょ)、場合によっては自宅訪問による取立てが始まります。
催告書とは、督促状を無視したり、悪質であると判断された場合などに内容証明郵便で送られてくる文書です。
督促状より催告書のほうが、緊急性が高いです。
なぜなら、催告書を放置した場合は、訴訟を起こされる可能性があるからです。
返済したくとも行き詰まっている中では『返済を迫られる』だけでも精神的な負担が大きいのに、このような催告書まで送られると絶望すら感じるでしょう。
ですが、道はあります!
任意整理を弁護士などの専門家に依頼すると、一時的に返済を止めることが可能なのです。
まず、依頼された弁護士などの専門家が、債権者に受任通知を送ります。
すると、債権者側は法律に基づき、取立て行為を止めなければなりません。
ただし、債務者に直接取立てることは禁止されていますが、裁判所の判断に基づいた債務回収はおこなわれます!
家族や勤務先などに内緒で手続きがしやすい
任意整理と同じ債務整理であっても、個人再生(民事再生)や自己破産をする際には、生活をともにする家族や勤務先の協力が必要になる場合が多いです。
例えば、個人再生(民事再生)の場合は世帯をともにする配偶者の給与明細・源泉徴収票などを求められることがあります。
さらに自己破産の場合は、債務者名義である大半の財産が差し押さえられることになるので、家族に内緒で手続きするというのは難しいでしょう。

財産を残せる
もしも『債務整理をしたい、でも財産も残したい』と考えるのであれば「任意整理」をおすすめします。
なぜなら任意整理は、減額交渉する賃金業者を選ぶことができるからです。
逆に自己破産や個人再生(民事再生)では、債務整理をする賃金業者を選ぶことはできません。
個人再生(民事再生)の場合、ローンのある車などは債務整理の対象となり、車の価値に関係なくローン会社に引き上げられます。
残せる財産は、個人再生の手続きにより減額された返済総額の範囲内だけです。
自己破産は、財産を換金して債権者への返済に回したうえで、残りの借金をなくしてもらう手続きなので、財産は基本的には残りません。
個人再生(民事再生)と自己破産の手続きは裁判所を介さないとできません。
手続きにあたっては、裁判所から、自身の所有する財産を明記した書類である「財産目録」を求められます。
「財産目録」に虚無の申告をするなどの不正が発覚すれば、個人再生(民事再生)や自己破産の許可は下りません。
その点、任意整理は、借入先の賃金業者との直接交渉によるものなので、裁判所へ「財産目録」を申告をする必要がありません。
任意整理は、残したい財産を除外をして借金の減額交渉をすることが可能です。
例えローン返済中の車であっても、交渉から外すことによって手元に残すことができるのです。
このようなことから、財産を残したいのであれば、任意整理がベストです。
簡単な手続きで済む
任意整理は、貸金業者との直接交渉で借金の減額をお願いするものであるため、借金をいくらに減額できるかについて法律があるわけではありません。
また、裁判所を介さないため、裁判所に提出する書類はありません。
そのため、必要とされる書類の量も多くはなく、裁判所に出向く必要もありませんので、他の債務整理に比べると、手続きが簡単です。
ただし、債権者から給料明細などを求められたりすることはありますので、その場合は準備しましょう。
職業資格の資格制限がされない
自己破産の場合は、手続きの間、一定の職業に対しての必要な保持する資格の停止が行われます。
そのため、資格が制限されている間はその職業で働くことができません。
参考までに、自己破産によって制限される職業を下記にまとめました。
自己破産により資格制限をされる職業
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 公認会計士
- 行政書士
- 生命保険の外交員
- 宅地建物取引主任者
- 警備員
その点、任意整理は上記の職業に就いていたとしても、資格制限によって働けなくなることはありません。
ここまで、任意整理によるメリットをご紹介してきました。
しかしメリットの裏には、必ずデメリットもあります。
次は、任意整理のデメリットについて、詳しく説明させていただきます。
任意整理のデメリット
納得して任意整理の手続きに進めるよう、デメリットの部分を知っておくことも大切です。
ここでは、任意整理で知っておくべきデメリットを4つご紹介します。
任意整理のデメリットは、以下です。
- 信用情報機関に登録される
- 裁判を起こされる可能性はある
- 担保の請求や保証人に返済請求がいく可能性がある
- 住宅ローンが組めなくなる期間がある
では、ひとつずつ解説していきますね。
信用情報機関に登録される
信用情報機関とは『金融機関が取引きする相手に、返済能力があるのか(信用しても大丈夫か)』を確認するための個人信用情報が記載・管理している組織です。
ブラックリストとも呼ばれていますね。
- クレジットの契約
- ローンで購入
- キャッシングなど
信用情報機関は現在3つあります。
- CIC
- JICC
- KSC
上記のどれかに加盟している企業は、クレジットなどのカード作成前やお金を貸付ける前に、信用機関にて申請者の過去の情報を閲覧します。
任意整理は裁判所を介さないとはいえ、信用情報機関には任意整理についても記載されるので、新たな借入れやクレジットカードの発行は数年の間できなくなります。
また、保証人も信用情報機関に登録されてしまうことになります。

裁判を起こされる可能性がある
貸金業者によっては、債務整理をさせないように「賃金返還請求訴訟」という裁判を起こす場合があります。
債権者は通常、債務者が債務整理手続きをしたり、行方をくらませたりすることを懸念します。
なぜなら、賃金返還請求をすることが難しくなってしまうからです。
そのため、債務者からの任意整理の申し出を断ったうえで法廷に持ち込む可能性があるのです。
裁判を起こされにくくするためには、債務整理の経験が豊富な弁護士を雇うことがポイントです。
なぜなら、債務整理の経験が豊富な弁護士であれば、賃金返還請求をする賃金業者はどこか、どの賃金業者がどれほどの割合の減額に応じてくれるかを認識できているからです。
そのため、裁判を起こしそうな賃金業者を任意整理の対象からあえて外して「賃金返還請求訴訟」を起こされるというリスクを回避できます。
このように、債務整理に詳しく経験豊富な弁護士に依頼すると裁判を起こされるリスク回避が回避でき、安心して債務整理ができるのです!
担保の請求や保証人に返済請求がいく可能性がある
任意整理のメリットでもお伝えしましたが、任意整理は、対象とする借金を選んで交渉することが可能です。
そのため、担保がある借入先や連帯保証人がいる借入先は、任意整理の対象外にすることで、これらのリスクを回避できます。
では逆に、担保や連帯保証人がついている借金を『任意整理したい場合』は、どうなるのでしょうか。
担保がついている借金に関しては、担保の売却額が借金の残高よりも少なくなっているような『担保割れ』の状態であれば、担保売却後の残りの借金を任意整理することが可能です。
連帯保証人がついている借金に関しては、債権者側からすれば『借金の返済請求ができる連帯保証人がいる』借金を減額する必要がありませんので、任意整理に応じてもらえない可能性も高いです。
どうしても任意整理を望むのであれば、連帯保証人と連名での任意整理が必要かもしれません。
その場合は、連帯保証人も信用情報機関に登録され、いわゆる『ブラックリスト入り』をしてしまうことになるので注意しましょう。
連名での任意整理を考えた時は、保証人の方とデメリットも含め、しっかり話し合うことが大切です。
住宅ローンが組めなくなる期間がある
任意整理のデメリットの部分でも触れましたが、信用情報機関に登録される期間が、一般的に5年~7年であり、その期間はローンを組めなくなります。
しかし、住宅ローンについては『ある方法』を使うと、ローンが組める場合もあります。
詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。

任意整理ができない人とは

任意整理は望めば全ての人ができる訳ではありません。
ここでは、任意整理ができない場合をいくつかご紹介します。
- 無収入など支払い能力がない。
- 生活保護を受給している、または申請中である。
- 借入金返済についての法的措置がとられている。
- 任意整理には応じない方針の賃金業者から借入れている。など
ひとつずつ、掘り下げて説明しますね。
無収入など支払い能力がない
任意整理は、借金がすべて無くなるということではなく、減額してもらった残りの金額を分割で返済していかなければいけません。
そのため、無収入かつ換金して返済に回せる財産が場合には、いくら借金を減額しても継続的に返済できる可能性がないため任意整理を選ぶことは難しいです。
ただ、たとえ債務者本人が無収入だとしても、家族に助けられ、継続的に返済可能な状態であれば、任意整理ができる可能性はあります。
生活保護を受給している、または申請中である
生活保護は、国から最低限の生活を送るために必要な生活費を受給することなので、受給されたお金を生活費以外に充てることはできません。
もしも、生活保護費を借金返済に充てていることがわかれば、受給停止です。
そのため、生活保護受給者の借金については、原則的には自己破産をすることになります。
ただし、借金額が少額であり、自立するには任意整理が有効である(例えば、自己破産による資格制限が就職の妨げになるなど)と判断された場合、例外的に生活保護費からの返済が認められる場合があります。
まずはとにかく、弁護士に相談することが重要です。
借金返済についての法的措置がとられている
任意整理を考えた時に、すでに債権者から民事訴訟や支払督促の手続きや申し立てが行われているのであれば、任意整理はできない可能性が高くなります。
なぜなら、任意整理は専門家の交渉による任意の制度であり、法的な強制力はありません。
債権者からすれば、法的拘束力が強い裁判上で勝訴し、差し押さえができる中で残りの元金を回収していく方が確実だからです。
任意整理の手続きの仕方について

任意整理をするにはまず、借入れしている賃金業者と借入額を確定しなければなりません。
もし、複数の賃金業者から借入れをしているのであれば、各業者からいくらずつ借入れをしているのかを正確に把握し、返済可能な額を決める必要があります。
そこで、弁護士などの専門家に債務整理の相談に行く際は、下記の書類を事前に準備しておくとスムーズです。
- 身分証明証(免許書・パスポートなど)
- 印鑑
- 借入先の一覧表
- 各借入先の契約書
これらの書類をそろえることが難しい場合は、弁護士に相談してくださいね。
手続きの3ステップ
- 借金状況を把握
- 返済計画表の作成
- 借入先との交渉
STEP1 借金状況の把握
- 借金の総額
- 借入日
- 利息
- 返済済みの金額など
借金の状態を正確かつ明確に把握しなければなりません。
STEP2 借金の返済計画をたてる
次は過払い金の有無と過払い額の把握です。
利息制限法で決められた金利の上限を超える金利で貸付けられていた場合、過払いの分を元本に充てて返済額を減らせます。
もしも、すでに元本を超える返済をしていた場合、借金がゼロになり、過払い金の返還を求めることも可能です。
このように過払い金があれば、それを差引いた金額で返済計画をたてます。
STEP3 借入先との交渉
STEP2で立てた『返済計画案』をもとに、下記のような手順で、借入先との交渉に入ります。
弁護士など専門家から借入先へ受任通知(介入通知・債務整理開始通知)を送付します。
↓
すると、借入先からの直接的な取立てが止められるので、一時的に返済を止めます。
↓
そして、任意整理の交渉をする借入先に『返済計画案』を送った後、代理人による直接交渉に入ります。
ただし、直接交渉をするためには、業者側の承諾が必要です。
借入先の業者との交渉がまとまったら、返済計画に基づき、返済をしていくことになります。
これは、弁護士に相談してから借入先との交渉が成立するまでの間を指します。
任意整理は私的な交渉なので、日数など細かくルールが定められている訳ではありません。
交渉先の賃金業者や交渉する賃金業者の数によって、手続きにかかる日数も変わってきます。
任意整理による借金減額方法

ここでは、任意整理によって、どのように借金が減額をされるのかを簡単にお伝えしたいと思います。
まず、減額する部分は、大きく分けて2つです。
- 支払総額
- 月々の返済額
それぞれの減額方法を順番に解説していきますね
支払総額の減額
元金を減らす交渉
- 頭金として最初にまとまった金額を払う代わりに、返済元金を減らしてほしい
- 現在も将来も、返済ができるような経済状況ではないため、返済元金を減らしてほしい など
元金を減らす交渉として、上記のような交渉をします。
貸付けしている貸金業者からしても、自己破産をされてほとんどの貸付けたお金が戻らないよりは、元金を減らしてでも回収できれば良いと考えてくれるかもしれません。
元本の減らし方について、詳しく解説した記事がありますので、合わせてご覧ください。

利息のカット
賃金業者は、どのように利益をだしていると思いますか?
それは『利息』です。
お金を貸付けて完済するまで『利息』は発生し続けます。
毎月の返済額が少なく利息分の支払いしかできていない場合、どれだけ支払いを続けようが元金が減ることがありません。
そのため任意整理では『今後の返済分については、全て元金に充てるよう』に交渉します。
これにより、支払総額をかなり減らせることになるでしょう。
具体的に利息の計算をしてみますね。
例)借入額:50万円 利息率:18% 毎月の返済額:1万円
完済期間→約7年半
支払総額→約90万円
例)借入額:100万円 利息率:15% 毎月の返済額:3万円
完済期間→約3年半
支払総額→約130万円
利息率や返済額によって変わるものの、返済期間が長引けば長引くほど返済総額は膨れ上がり、時には返済総額が借入れ金額の倍近くまでになってしまうのです。
月々の返済額を減額
例え支払総額の減額ができたとしても、月々の支払い方によっては返済が厳しいことに変わりはありません。
そのため、月々の支払額を継続して支払える金額になるような分割払いができるように交渉します。
一般的には、3年(36回)~5年(50回)の分割払いに応じてくれる賃金業者が多いです。
分割払いにした場合の具体例
例)借入れ:100万円
分割12回:1年→毎月の返済額:8万3,333円
分割36回:3年→毎月の返済額:2万7,777円
分割60回:5年→毎月の返済額:1万6,666円
任意整理によって、支払総額と月々の返済総額の2つを減額できれば、毎月の返済も楽になり、精神的にも落ち着いて完済していけるでしょう。
任意整理は自分でできる?

任意整理は、実はやろうと思えば自分で手続きすることも可能です。
裁判所を通さずに手続きができるからです。
ただし、全くお勧めはしません。
賃金業者は、今までに裁判や債務整理の経験がないと思いますか?
もちろん任意整理の交渉も含めて、いろいろなケースを経験し熟知しているはずです。
自分で任意整理を行った場合、たとえ手続き上はうまくいったとしても、和解内容をみると実はかなり不利な状況にされている場合があります。
また、弁護士などの専門家に交渉をお願いすれば、一時的にでも取立ての停止と返済の停止ができるのですが、個人での手続きでは、それらを停止できません。
よく弁護士などの専門家に頼むお金がないから難しいというお話しを聞きますが、一時的に返済を停止できることを考慮すると任意整理にかかる費用は決して高額ではありません。
また、弁護士に相談するだけなら、無料でできます。
しかも、手元に支払いに十分な資金がなくても弁護士に依頼できる支払い方法が、いくつかあることをご存じでしょうか?
その点については、詳しく載せている記事をご覧くださいね。

任意整理のメリットとデメリットとは!任意整理を詳しく解説! まとめ
今回は、任意整理のメリットとデメリットを中心に、任意整理の流れや減額ポイントなどについてもお伝えしました。
任意整理は裁判所を介さず手続きができ、債務整理の中で費用が一番安いうえ、手続きが簡単
家族や勤務先に内緒で手続きがしやすい
弁護士などの専門家に依頼すると、一定期間、借入先からの取立ての停止がされる
任意整理をすると、ブラックリストと呼ばれる信用情報機関に登録される
担保を返済に充てられたり、保証人に返済請求がいく可能性がある
借入先から裁判を起こされる可能性はある
理を希望してもできないことがある
借金をしている人の状況によっては、任意整
もしも、毎月の借金返済に苦しんでいらっしゃるのであれば、債務整理を検討してください。
債務整理の中でも『任意整理』は、唯一裁判所を通さずに手続きができるため、他の債務整理に比べて手続きも簡単であり、費用も一番安く済みます。
それでも手元に依頼するだけのお金がない……
諦めないでください。
多くの法律事務所では、無料相談をおこなっています。
依頼費用の相談にものってもらえますし、支払いにはいくつか方法があります。
決して諦めなければ、必ず道は開けます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。