TVドラマなどの夜逃げシーンから『夜逃げすれば借金からも解放され人生をリセットできる』なんてことをイメージする相談者さまもいるかもしれませんね。
しかし現実はそんなに甘くありません。本記事のテーマはこちらです。
借金がつらくて夜逃げしたらどうなる?
夜逃げをした人の末路から夜逃げが現在減っている理由も詳しく紹介しています。
借金は夜逃げしても解決できない

早速ですが、結論から言いますね。
借金は夜逃げをしたところで解決できません!
夜逃げを考える人の多くが、貸金業者からの取り立てや脅迫、日常生活が送れなくなるほどの生活難に悩んでいます。
すると、逃げてしまえば楽になれるんだ! と夜逃げを思いつくことでしょう。
しかし夜逃げをしても、返済からは一時的に免れるでしょうが、借金の根本的な解決にはつながりません。
なぜ逃げたら解決できないのかをもう少し詳しく解説していきますね。
借金はなくせない
夜逃げをしても返済義務が白紙になることは残念ながらありません。
お金を借りた時点で、相談者さまには返済の義務が発生します。
取り立てに関しても、貸金業者は法的に返済を求めても良い権利があり、債務者にはそれに応える義務があります。
残念ですが、逃げたところでこの義務からは解放されません。
見つかるまでの短期間は返済をしなくても良いでしょうが、見つかってしまうのは時間の問題です。
夜逃げでチャラにできる可能性もゼロではない?
逃げても意味はないとわかっている。
それでも夜逃げしてしまう人は、わずかな希望に賭けてしまうのです。
それは……
希望=時効
借金には時効があり、この期間を過ぎれば借金をゼロにすることが可能になります。
時効を成り立たせるには「消滅時効」が加味されます。
債権者が債務者に対して一定の期間、返還を要求しなければ、債権者が持つ「返済させる権利」が消滅するということ。
一定の期間というのは、借入内容によって異なります。
借入先の種類 | 時効までの期間 |
銀行、貸金業者、クレジットカード会社、信販会社 | 5年 |
信用金庫、住宅金融公庫 | 10年 |
個人 | 10年 |
普通なら「借入を始めた日」と想像しそうですが、実は「最後に返済をした日」がカウントを開始する日になります。
なので、例えば貸金業者に返済を3年間していなかったら、のこり2年で時効を迎えます。
しかし、3年間は返済してなかったけれど、その後1回でも返済をしたらまた5年間のカウントがリセットされるのです。
借入からまだ一回も返済していなければ、期日の次の日がカウントの初日となりますね。
時効が過ぎてもダメ?
時効を迎えるまでどうにか見つからず生活できたとしましょう。
ですが、ただ時が過ぎればOKというわけじゃない! ことを見ていきますね。
時効後は「時効を迎えましたのでもう私はお金を返す必要はありません!」と債権者へ主張をしなくてはなりません。
これは「時効の援用」と呼ばれていて、トラブルを避けるため一般的には内容証明を利用しておこなう場合が多いです。
口で伝えるだけでは、あとから「言った! 言ってない!」と別の問題が出てきてしまうのが容易に想像できますね。
また、自分では時効と思っていても、実際に事実確認をすると時効を迎えていない場合も多くあり、判断はとても難しいです。
もし援用の手続きをしても、債権者に反論されたり、調べてみたら支払いがあった! なんてこともよくある話でしょう。
夜逃げしても時効まで生活を保てない
夜逃げで時効まで見つからずに生活し続けるって実際にはどうなんでしょう?
残念ですが「とても厳しい」です!!
どんなに少なくとも5年以上は存在を消して、生活し続けなくてはなりません。
現実的に考えて難しいですよね。
たとえ身を潜めてうまく暮らせたとしても、貸金業者は所在不明の債務者に対して、裁判を起こすことが可能なのです。
裁判を起こされると、それまでの時効はなんとリセットされてしまいます!
また、裁判後からの新規カウントは借入先の種類にかかわらず10年と決まっているため、5年夜逃げすれば大丈夫だと思っていたところに、そこからさらに10年増えてしまう……。
そのため、最悪の場合15年以上も逃げ続けなくてはいけないのです。
どう考えても時効まで夜逃げを乗り切るのは難しいとわかると思います。
名前を変えても意味はない
夜逃げとあわせて借金から逃げる方法としてよく挙げられるのが「名前を変える」ということ。
名前を変えれば、借金の記録もなくなるのでは? と思われる相談者さまもいらっしゃるかもしれませんが、はっきり言うと「不可能」です。
たとえ名前を変えたとしても、借金の記録まで消されることはないのです。
そもそも名前を変えるには、役所に届け出をしなくてはなりません。
届けをする時点で、居住地を示すことにつながります。
貸金業者は、夜逃げをした相手の居住地を常に調べています。
役所への届け出がないか、戸籍や住民票に変更はないか、をこまめに確認しているんですよ。
それゆえ、名前を変更したところですぐにバレてしまうでしょう。
また、名前を変更したら、夜逃げ中に新規借入をして生活をしのごうと考えますよね?
残念ですが、こちらに関しても失敗の可能性大です……。
借入の際には、必ず審査があります。
審査では、信用情報機関で登録されている情報との照合を行います。
以前では名前を変えてしまえば審査にも通る、という事例もあったようですが、現代ではあり得ません。
CICなどの信用情報機関は、交流ネットワークでつながっていて、いつでも顧客情報を調べることができるのです。
過去の借入履歴や返済状況もわかってしまいます。
さらに、審査をする前に貸金業者は、旧姓も記入するような書類を書くことを求めてきますので、そのタイミングで判明してしまうこと請け合いです。
借金が辛くて夜逃げした人の末路

夜逃げでは借金は解決できないとわかりましたね。
それでもまだ、夜逃げ生活は実際にはどうなの?と気になる相談者さまもいらっしゃるかもしれません。
夜逃げを実際にした場合にはどんな生活が待っているんでしょうか?
もっとも困ることの一つが「住民票」が移せない! ということです。
この項目では、夜逃げで一番の弊害とされる「住民票が移せない」について、起こる問題を深堀りをしていきます。
保険証が発行されない
まず住民票がないと保険証が発行されません。
夜逃げした先で転入届を出さないと住民登録はされませんので、国民健康保険に加入できないからです。
もともと持っていた保険証は、夜逃げ後一定期間は使えるかもしれませんが、いずれ使えなくなります。
保険料をその土地に納めることで健康保険は利用できますから、夜逃げした場合は保険料を支払うことができません。
その結果、税金(保険料)未納となり、役所から住民登録も削除されて保険証の利用も止められてしまいます。
通常役所では、未納があった場合に実態調査として近隣から情報を集めたり、実際に訪問して居住を確認します。
その際に、居住していると確認できなかったら、住民登録は削除されてしまうのです。
(これは職権削除と呼ばれています。)
病院に行っても保険証が使えないとなると、通常3割負担の医療費は全額自己負担での支払いになります。
病気やけがは突然やってきますし、病院に行かず自力で対処するのは不可能ですよね。
夜逃げで生活も厳しい環境なのに、そこで高額な医療費を請求されたらひとたまりもありません。
定職につけない
次に、住民票がないと困るのが「就職」。
夜逃げ先で新しい仕事を見つけたとしても、ほとんどの会社で雇用契約のときに「現住所を確認できる書類」の提出が必要です。
現住所の確認書類としては、住民票と住民票記載事項証明書がよく挙げられますね。
住民票記載事項証明書は、住民票に記載された情報の中で一部だけを記載したもので、住民票と同様に役所で申請して発行します。
日雇い労働など単発の仕事であれば、住民票の提出は不要かもしれませんが、やはり長期契約してもらえる職につかないと生活は困難です。
アルバイトやパート、正規雇用を目指すのであれば、まず住民票が必要ですし、本人確認書類として現住所が記載された運転免許証などのコピーも必要です。
夜逃げだとどちらも提出できなくなりますので、まともな職には就けないと思った方がよいですね。
生活保護の対象にならない
住民登録をしていないと「生活保護の対象にならない」のも困ることの一つです。
上記で挙げた
- 保険証が使えない
- 雇用契約ができない
が起こると、当然ながらお金がないから病院に行けない、まともな職につくこともできず安定した収入が得られない、と毎日生きることすらギリギリの状態に陥ります。
体の不調が続くけど、耐えるしかない。
仕事をしたいけど雇ってもらえない。
今日も食事が取れない。必要なものがなにも買えない。
想像するだけで、恐ろしい気持ちになりますね……。
こんなとき、普通なら役所経由で生活保護という救済制度に頼れますが、住民登録が削除されている状態では、生活保護を受けることもできないのです。
住民票がないだけで、こんな深刻な環境に追い込まれてしまうと思ったら、夜逃げをしても良いことはないとわかりますね。
細かいことをさらに挙げていくとキリがありませんが、ほかにも以下のような多くの問題が襲ってきます。
このように夜逃げで人生の綱渡りをするのは、とても危険なんです!
明日はどうなるか、生きていられるだろうか、うまくいかなければどん底の生活が待っていることは間違いありません。
夜逃げにはしる前に、解決方法を客観的に考えた方が良いです。
借金問題のほとんどが債務整理で解決できますし、実際に解決してきています。
実際の減額事例を見て、ご自分もイメージしてみてください。

借金による夜逃げが減ってきた理由

夜逃げが現実的ではないと散々お伝えして参りましたが、現在夜逃げをする人もかなり減ってきています。
「夜逃げをしてもうまくいかないとわかっているから」に加えて「夜逃げをしなくてもなんとかなる時代になってきたから」ということが理由として挙げられますね。
夜逃げをしなくなってきた理由について、詳しく見ていきましょう。
単身じゃないと現実的に難しいから
夜逃げといえば、単身では行わず「家族で行う」イメージが強いと思います。
家族で夜逃げはとても大変です。
まず単身とは違い、荷物が何倍も多く、準備をするだけ相当の日数がかかりますよね。
また、家族で大移動ですから、誰にも気付かれずに出ていくのは難しいです。
ご近所の方に確実に見られてしまいますし、貸金業者にも感づかれてしまうでしょう。
毎日少しずつと思っても、移動先で荷物を保管するのは困難ですし、何度も往復するのはリスクも高いはずです。
さらに、家族で夜逃げということは、お子様がいる世帯も多いでしょう。
お子様を学校に通わせているなら、転校先を決める手続きで住民登録が必要です。
学校に通わせられないばかりか、保険証がないことで病院にも連れていけませんし、本来なら貰える国からの手当(児童手当等)もすべて資格を奪われてしまいます。
単身で逃げるのとは違って、家族がいるとそれだけでリスクが大になってしまうでしょう。
取り立てから守られるようになった
夜逃げを考える理由として激しい取り立てが思い浮かぶ方も多いと思いますが、たしかに貸金業者からの取り立ては悩みの種ですよね。
自宅に押しかけてくることはもちろん、家族や職場の人にもつきまとったり、嫌がらせをしたり、ときには暴力や脅迫も……。
かつてはこんなことが当たり前に行われていました。
しかし、現在では、取り立てを厳しく取り締まる法律ができ、債務者が悩む件数もかなり減っています。
正規の貸金業者なら、過度な取り立てはもはや横行していません。
債務者であっても守られるという点も、夜逃げが減った要因でしょう。
ただし、ヤミ金融業者(いわゆる闇金)だと現在も取り立てをするところもありますので闇金に手を出すことは絶対にやめましょう。
債務整理が利用できるから
2010年に貸金業法が見直される前は、債務整理という手段がなく、借金を解決できる方法を個人で探すのはとても大変でした。
どう頑張っても返済ができず、助けてくれる人もおらず、夜逃げを選択するしかないという人もいたかもしれません。
ですが「債務整理によって借金問題は解決できる!」という情報が、IT社会の発達とともに広がり、借金解決のスタンダードになりました。
債務整理の良い点やどういった手順で行うのかは、だれでも気軽に調べられますし、今ならネット経由で弁護士に相談もできるようになっています。
それゆえ、債務整理による解決が現実的になった&身近になったという点も、夜逃げの減少につながったように思えますね。
借金で夜逃げを考える前に

先程もお伝えしましたが、借金で夜逃げをする前に「債務整理」を検討しましょう。
債務整理を利用すれば、安全かつ安心な方法で借金を解決できます。
多くのリスクを抱えて夜逃げをするより、はるかに現実的ですよ!
そこで、最後に債務整理について紹介していきますね。
債務整理には4種類ある
債務整理の手続き方法は、4つ挙げられます。
(通常3種類で紹介されることが多いですが、本記事では4種類を紹介しています)。
任意整理
過払い金請求
個人再生(民事再生)
自己破産
それぞれの違いは、以下の表で示しています。
種類 | 内容 | すべき人 |
任意整理 | 貸金業者と直接交渉することで、利息と遅延損害金の減額をしてもらい、残高を3年程度の分割で返済する。裁判所を通さない。 |
|
過払い金請求 | 不正な金利を取得していた貸金業者に余分な支払いの返還を求める。裁判所は通さない。 |
|
個人再生(民事再生) | 裁判所で手続きを行う。借金の大幅減額が可能で最大8〜9割の減額が可能。 |
|
自己破産 | 裁判所で手続きを行う。返済義務のすべてを免除してもらえる。 |
|
これらの手続きで、どの方法が自分に合うかは、相談者さまの借入状況や返済環境によって様々です。
まずはご自分で判断する方法もありますので、こちらの「借金返済ルート早見表」をご参考ください。

完済できないなら自己破産
どう考えても夜逃げするしか方法が思い浮かばない。
こんなふうに感じるなら夜逃げより自己破産を検討するのはいかがでしょうか。
返済するのをやめたい、借金をなかったことにしたい、これを実現できる唯一の債務整理方法が自己破産です。
夜逃げでもうまくいけば借金をなくせるかもしれませんが、それではあまりにもリスクやデメリットが多すぎます。
自己破産は、合法的に安全な方法で借金を帳消しにできる手続きですから、夜逃げを考えるくらいなら自己破産を前向きに視野に入れることをオススメします。
ただし自己破産にも、デメリットはありますよ。
ですが、夜逃げのデメリットに比べれば自己破産の方がリスクが少ないと感じませんか?
もう完済は無理だと感じているのなら、自己破産をした方が確実ですよ!
闇金業者は法的に対処できる
「闇金業者からの取り立て」が夜逃げを後押ししているということも挙げられますが、闇金業者は法的に対処できます。
その前に闇金業者のボーダーラインを確認しておきましょう。
闇金業者=20%以上の金利で貸付を行う業者
以前は29.2%でしたが、法改正で引き下げられて現在は20%が上限とされています。
そのため、これを守らない貸金業者は闇金認定されています。
極端な例ですが、5万円の貸付に対し、毎週1万円の支払いを求めるなどです。
最終的には元本とは比べ物にならないほどの支払いをしてしまうのがわかりますね。
違法金利で貸付を行うこれらの業者には、以下の罰則が与えられます。
また、取り立ても常軌を逸していますよね。
昼夜を問わず、個人宅や職場へ押しかけたり、暴力、脅迫、とやりたい放題です。
こちらも、現在は厳しい罰則が与えられており、違反すると2年以内の懲役か300万円以下の罰金が課せられています。これに加えて恐喝罪・名誉毀損罪・住居侵入罪など付随して他の罪も問われます。
さらに民法708条では以下が定められています。
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。
引用:民法708条
要するに、闇金業者から借入れたお金は返す義務がありません。

これだけの犯罪を犯している団体にお金を借りて、返し続けるなんておかしいと感じませんか。
相談者さまはそもそも悩む必要がないのですよ。
個人で闇金業者と話し合いをするのは難しいですが、間に弁護士がはいればあっという間に解決できます!
借金による夜逃げはアリ?返済ができず逃げた人はこうなります まとめ
借金で夜逃げをするのはアリなのかどうかを解説してきました。
夜逃げで借金は解決できない
夜逃げしても時効まで安定した生活を送るのは困難
返済が難しいなら債務整理を検討した方が良い
闇金業者は対処が可能
以前は夜逃げも借金から逃げる方法として使う人もそれなりにいましたが、現在ではさまざまなな法改正や支援制度により、夜逃げをする必要はなくなりました。
夜逃げをしても、今より何十倍も辛い生活が待っているだけです。
夜逃げを検討するほどですから、相談者さまが相当な状態に追い込まれているとよくわかります。
ですが、夜逃げによって生命活動まで維持できなくなった例もあるんですよ。
現実的に考えて「債務整理」という国が作ってくれた制度を利用するのが一番です!
もうこれ以上は耐えられない、返済不可能、精神的にもギリギリ。
こんな状態なら、夜逃げにはしらず「自己破産」を検討しましょう。
現在より不便な生活にはなってしまいますが、借金も取り立ても一切なくなると思えば、前向きに生きていけるはずです。
どうか抱え込まず、勇気を出して法のプロに頼ってみてください。
きっと相談者さまを親身にサポートしてくれますよ。
借金を人に相談するのが不安なら専門家へ
返済活動も取り立てにも悩んでいることを人に相談なんてできない!
と悩み、夜逃げを悶々と考えてしまう。
それなら、同じような境遇の方を多数サポートしてきた
弁護士さんへ思い切って話してみるのはいかがですか?
相談者さまを下に見ることも批判することもありません。
適切なアドバイスや解決方法を提案してくれます。
初回は無料で聞いてくれる事務所がほとんどですので、気軽に話しにいけますよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!