個人再生(民事再生)していることで、結婚が不可能になるようなことはありません。
とはいえ、個人再生(民事再生)をしていることが、これからの結婚生活にどう影響するのかはとても気がかりよね。
そこで、今回のポイントはこちらです。
個人再生(民事再生)をしていても結婚はできるが、婚約者への説明は丁寧にしよう
この記事では、個人再生(民事再生)の結婚への影響や、婚約者・配偶者への説明の仕方などを詳しく紹介しています。
個人再生(民事再生)は結婚にどう影響するの?

債務整理の中のひとつである個人再生(民事再生)は、住宅やローンの支払いの終わった車などを維持しながらも、借金を約2割まで減らすことができる制度です。
ただし、個人再生(民事再生)後に残った借金は、再生計画に基づきおおむね3年をかけて支払わなければなりません。
ですので、これから結婚しようと考えているのならば、なるべく早く手続きをすることをおすすめします。
とはいえ、個人再生(民事再生)が認可されたとしても返済には数年間かかりますから、結婚に与える影響が心配ですよね。
どうかご安心ください。
結論から言うと、個人再生(民事再生)をしているからといって結婚そのものに大きく影響することはありません。
個人再生(民事再生)の事実が結婚に影響しない理由は次の5つです。
- 個人再生(民事再生)中でも結婚できる
- 個人再生(民事再生)の事実が戸籍に載ることはない
- 配偶者に借金の返済義務はない
- 配偶者のローン審査に影響しない
- 子どもの学校に知られることはない
ひとつずつ見ていきましょう。
個人再生(民事再生)中でも結婚できる
個人再生(民事再生)をすると、当面の間ブラックリストに載ってしまうのでローンを組めなくなります。
しかし、それ以外に住居や職業などが制限されることはありません。
つまり、個人再生(民事再生)によって結婚の手続きが制限されることはありません。
ただし、結婚することによって配偶者ができ、世帯人数も変わります。
それによって提出しなければならない書類などが変わってくるかもしれません。
個人再生(民事再生)を手続きしている最中の結婚は、担当の弁護士に相談しながら進めたほうがいいでしょう。
個人再生(民事再生)の事実が戸籍に載ることはない
結婚時は、お互いの戸籍を見る機会が増えますよね。
たとえば婚姻届けを提出する際には戸籍謄本が必要ですし、お見合いなどではお互いの家族にも戸籍を見せることもあります。
しかし、個人再生(民事再生)をした事実が戸籍謄本や住民票に残るようなことはありませんので、心配はご無用です。
ただひとつ個人再生(民事再生)の事実は「官報」という国が発行する機関誌に記載されます。
個人再生(民事再生)は裁判所を通して行われますので、官報に住所氏名が記載されるのです。
とはいえ、官報はその存在自体があまり知られていませんし、毎日、事細かに読んでいる一般人はほとんどいません。
官報経由で発覚することはまずないと言えるでしょう。
官報についての詳細は、こちらの記事で紹介しています。

配偶者に借金の返済義務はない
個人再生(民事再生)によって無事に借金が減ったとしても、ゼロにはなりません。
残った借金は、3年(長くて5年)かけて返済します。
そしてこの借金は、借金をした本人にのみ返済義務があります。
つまり、個人再生(民事再生)中に結婚したとしても、その返済義務が配偶者にまで降りかかることはありません。
なぜなら日本は民法で「夫婦別産制」が規定されています。
夫婦別産制とは「たとえ婚姻関係にある夫婦でも、資産は名義人のもの(特有財産)」であるということです。
これは預金や不動産といった正の資産だけでなく、借金などの負の資産についても同様です。
結婚して名字が変わったとしても借金はなくなりませんが、同じ名字になった配偶者が一緒に借金を背負うということもありません。
配偶者のローン審査には影響しない
個人再生(民事再生)をすると個人信用情報機関に登録、いわゆる「ブラックリスト」に載ります。
一度ブラックリストに載ってしまうと、登録が消えるまでの約5~10年間は相談者さま名義でのローンを組むことが出来なくなります。
しかし、相談者さまが個人信用情報機関のブラックリストに登録されていることは、配偶者がローンを組むこととは全く関係がありません。
ローン審査はあくまでローンを組む本人について審査されますので、家族の個人再生(民事再生)は影響しません。
そのため、たとえ相談者さまが個人再生(民事再生)をしたとしても、配偶者の名義であれば住宅や車を購入するためのローンを組むことも可能です。
子どもの学校に知られることはない
個人再生(民事再生)をしたことで、子どもに何らかの影響が及ぶこともありません。
子どもが園や学校に通うようになると、保護者の氏名や職業などの個人情報を提出する機会が増えます。
しかし、その中に個人信用情報は含まれないので、当然ですが個人再生(民事再生)の事実が発覚することはありません。
さらに、もちろん子ども本人の信用情報に影響することもありませんのでご安心ください。
唯一子どもへ影響するとしたら、ブラックリストに登録されている間は「奨学金の保証人になれない」「教育ローンが組めない」ということがあります。
ただし、個人再生(民事再生)後は長くとも5年以内に借金を返済しますし、ブラックリストも長くとも10年以内には外れるでしょう。
つまりまだこれから結婚という段階であれば、お子さんの教育費がかかるようになるまでには、借金も完済されているしブラックリストからも外れているはずです。
未来のお子さんのためにもためにも、債務整理後には配偶者と協力し合いながら、借金に頼らないお金の使い方を身につけていってくださいね。
結婚前の個人再生(民事再生)は隠しやすい

隠し事の是非はさておき、もしもまだ結婚前であれば、個人再生(民事再生)のタイミングは今のうちがおすすめです。
その理由は次の2つです。
- 必要となる書類は自分名義のものだけ
- 弁護士と連絡をとりやすい
ひとつずつ見ていきましょう。
必要となる書類は自分名義のものだけ
個人再生(民事再生)は裁判所に申し立てます。
借金を約2割にまで減らすことが出来る債務整理ですから、当然提出しなければならない書類は多くあります。
特に個人再生(民事再生)の場合は、減った分の借金を返済するための再生計画が重要です。
さらに、再生計画通りにきちんと返済できることを証明する必要があるため、世帯全体の「収入」と「支出」の状態を明らかにしなくてはなりません。
つまり、結婚後に個人再生(民事再生)を申し立てる場合は、自分の分だけでなく、配偶者の分の給与明細や世帯の家計簿などの書類が必要になるのです。
逆に結婚前であれば、これらの書類はすべて自分の分だけですみます。
婚約者の収入証明等を提出する必要はありませんので、同棲(どうせい)していない限りはバレる心配はありません。
弁護士や裁判所と連絡を取りやすい
裁判所に提出する書類は、不足がなく、かつ、個人再生(民事再生)がきちんと認められるような内容で書かなくてはなりません。
そのため個人再生(民事再生)の手続きには、弁護士などの専門家の力を借りることが必要不可欠です。
個人再生(民事再生)の手続き期間中(約6カ月間)は、弁護士や裁判所とたびたび連絡を取り合う必要があります。
やり取りは電話やメール、書面の郵送などさまざまな形で行われます。
そのため一緒に住んでいる配偶者に隠しながら弁護士とやり取りをするのは、時に難しいかもしれません。
その点結婚前であれば、電話でのやり取りはもちろん、郵送にもおびえる心配はないので、スムーズに個人再生(民事再生)の手続きが進められます。
配偶者に知られずに個人再生をすることは難しい

結婚前であれば個人再生(民事再生)のことは婚約者に知られずに手続きできますが、結婚後には難しいかもしれません。
その理由は次の4つです。
- 世帯全体の収入・支出の報告が必要
- 借金を整理する対象を選べない
- 相談者さま名義でのローンは組めなくなる
- ローン支払い中の車は手放す必要がある場合も
それぞれご説明しますね。
世帯全体の収入・支出の報告が必要
上にも書いた通り、個人再生(民事再生)の手続きの際には、世帯全体の「収入」と「支出」を明らかにした収支表をつくらなければなりません。
夫婦は生計をともにしていますので、本人だけでなく、配偶者の源泉徴収票や給与明細(過去2カ月分)などを提出する必要があるということです。
これらの収入に関する証明書は、配偶者の雇用形態(正社員、パートなど)に関係なく必要です。
もしも配偶者には収入がなければ、収入に関する書類を提出する必要がありません。
しかし同じく提出の必要がある「家計収支表」には、食費や光熱費をはじめ生活にかかるお金すべてを記載しなければならないのです。
配偶者に収入がないということは家事全般を担っている可能性が高く、これらの書類について家事従事者の協力を得ずに作成することは難しいでしょう。
借金を整理する対象を選べない
個人再生(民事再生)は、任意整理とは違い借金の対象を選べません。
なぜなら『すべての債権者は平等に扱う必要がある』という「債権者平等の原則」があるからです。
つまり、配偶者が連帯保証人である借金についても当然整理対象に含まれます。
配偶者が連帯保証人である借金を個人再生(民事再生)手続きした場合、残高は連帯保証人が代わりに返済しなければなりませんから、隠すことは不可能です。
個人再生(民事再生)をするメリット・デメリットは、こちらの記事でご説明しています。

相談者さま名義でのローンは組めなくなる
先ほど、個人再生(民事再生)をしても配偶者のローン審査には影響しないとお伝えしました。
しかし、相談者さまに関しては個人再生(民事再生)の手続きをすることでブラックリストに記載されますので、ローンが組めなくなります。
ブラックリストに登録されている期間(約5~10年間)は相談者さま名義でのローンを組めませんので、すべての支払は現金の一括払いのみです。
結婚していると住宅、車、教育などさまざまな場面でローンを組む可能性があります。
相談者さま名義では「ローンを組まない・組めない」ことに関して、配偶者が納得する説明がつかない以上、債務整理を隠すことは難しいでしょう。
ブラックリストへの登録についてはこちらの記事をお読みくださいね。

ローン支払い中の車は手放す必要がある場合も
これは、車の所有権を持つのは『誰か』という問題です。
もし一括払いやローン完済によって車の購入代金がすべて支払われていれば、所有権は買主です。
その場合は、車を手放す必要はありません。
反対に、まだローンの支払い中である場合は、車の所有権はローン会社のままになっていることが多いのです。
このことを、所有権留保と言います。
所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)とは、買主にすでに引き渡したものの所有権を、代金が完済されるまでは売主やローン会社がもつこと。
個人再生(民事再生)により、ローン会社に「ローンの回収は困難」だと判断されてしまう可能性があります。
そうなってしまったら、ローンを払っている途中の車は取り上げられてしまいます。
突然車がなくなったことを、配偶者に隠したり言い訳したりするのはなかなかむずかしいものがありますよね。
個人再生の事実を配偶者に伝えるには?

お金と生活は、切っても切れない関係にあります。
前述の通り、結婚後に配偶者に内緒で個人再生(民事再生)を進めることは、とても難しいです。
そして、結婚前後どちらであっても、個人再生(民事再生)を内緒で進めたら、発覚したときには婚約者・配偶者の信用を大きく失いかねません。
婚約者・配偶者に説明したい点
婚約者や配偶者に個人再生(民事再生)を手続きする・していることを伝える際には、以下の点をしっかり理解してもらいましょう。
- 債務整理は、生活を建て直すための合法的な手段である
- 借金を完済するには債務整理が必要である
- 個人再生(民事再生)は破産せずに借金を2割まで減らせる
債務整理は、生活を建て直すための合法的な手段である
婚約者・配偶者が借金とは無縁だった場合「債務整理」という言葉そのものを良く知らず、怖いイメージや借金を踏み倒すというイメージを持っている可能性があります。
そのため、まずは債務整理というのが「国が用意した、借金生活から立ち直るための救済措置である」ということをしっかりと説明しましょう。
借金を完済するには債務整理が必要である
「もし債務整理をしなかったらどうなるか」ということをお伝えすることも、債務整理について理解を得やすいポイントです。
と責められたところで、過去は変えられません。
債務整理をすれば借金を完済できる見通しが立つこと、借金を完済できれば人生がより良くなることを伝えましょう。
個人再生(民事再生)は破産せずに借金を2割まで減らせる
債務整理に対する理解を得られたら、次はその方法についてです。
「なぜ債務整理の中でも個人再生(民事再生)なのか?」という理由を伝えたいところです。
- 任意整理では借金の元金は減らない
- 自己破産では住宅などの財産を残せない
- 個人再生(民事再生)は、破産せずに借金の元金を2割まで減らせる
これらの点をしっかりと説明しましょう。
それに加えて、上でもお伝えしたポイントを説明することも配偶者の安心が得やすいでしょう。
- 個人再生(民事再生)中でも結婚できる
- 個人再生(民事再生)の事実が戸籍に載ることはない
- 配偶者に借金の返済義務はない
- 配偶者のローン審査に影響しない
- 子どもの学校に知られることはない
これ以上借金が膨らむ前に個人再生(民事再生)をすることが、家族にとって一番幸せになれる方法であると伝えることが大切です。

夫婦関係が悪化しないよう専門家の助言を受けよう
ここまでお伝えしたように、個人再生(民事再生)をしていても結婚することは可能ですし、配偶者に借金を背負わせることにもなりません。
しかし、世帯という観点から見ると借金があることは事実で、そのことで婚約者・配偶者との関係が悪くなってしまう可能性は否定できません。
そのため、なるべく早めに弁護士に依頼をし、配偶者との関係が悪化しないようにどのように手続きを進めたらよいのかアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士に相談するのはハードルが高いかもしれません。
しかし、借金問題は放っておくと状況は悪化するばかりです。
利息が膨らむと借金の返済が滞り、滞ったことで遅延損害金がまた増え……ついには自己破産をするしかなくなってしまいます。
そうなってしまう前に、ぜひまずは弁護士の無料相談を使ってみてください。
結婚している・したいからこそ、未来を明るくするには専門家によるお手伝いが有効です。

個人再生と結婚に関する疑問

ここでは、個人再生(民事再生)と結婚に関する疑問をご紹介します。
結婚で名字が変わったらブラックリストはどうなる?
たとえ結婚により名字が変わったとしても、ブラックリストの登録はそのままです。
信用情報機関に登録される情報は、氏名や生年月日だけではありません。
免許証番号や保険証番号など、個人と関連するデータも登録されるため、たとえ名字が変わってもブラックリストから外れることはありません。
さらに、金融機関で借り入れをする際には、旧姓の記入欄もあります。
このように、ブラックリストに登録されていることを隠すのは難しいでしょう。
個人再生をしている人の扶養に入ることは可能?
夫が個人再生(民事再生)をしている場合に妻を、妻が個人再生(民事再生)をしている場合に夫を、被扶養者とすることは可能です。
なぜなら、個人再生(民事再生)と扶養は関係がないからです。
配偶者はクレジットカードを作れる?
たとえ個人再生(民事再生)をしていても、配偶者名義であればローンが組めるのと同じく、配偶者のクレジットカード利用に制限はありません。
たとえ相談者さまの扶養に入ったとしても、クレジットカードの審査に必要なのは申請者本人の信用情報なので、ご安心ください。
個人再生は結婚に影響する?婚約者への説明方法まで詳しく解説!まとめ
この記事では、個人再生(民事再生)が結婚に影響するかということを詳しく解説してきました。
本記事のまとめはこちらです。
個人再生(民事再生)をしていても結婚に制限はない
婚約者・配偶者が借金を背負うことはない
結婚前の個人再生(民事再生)はバレづらいが、結婚後は隠すのは難しい
配偶者には、丁寧な説明で打ち明けよう
借金があることをパートナーに知られたくないと思う気持ちは当然です。
しかし、借金があるという事実は変えられません。
そのうえで今、債務整理という方法にたどり着こうとしています。
これからしっかりとご自分の借金と向き合い、もう二度と繰り返さないという決意と態度を示すことで、婚約者・配偶者からの理解も得やすくなるでしょう。
弁護士など専門家の力を借りながら、ご家族の未来を少しでも明るくしていってくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。