夫が個人再生(民事再生)をしたら、妻である私にも影響があるのかしら?
私の財産はどうなっちゃうの?
いざ個人再生(民事再生)に踏み切ろうと思っても、配偶者のことを考えて足踏みしていませんか?
そこで、本記事のポイントはこちらです。
個人再生(民事再生)をしても、妻(配偶者)の財産にはほとんど影響はありません!
配偶者の財産と一言で言っても、いろいろありますよね。
給料、保険証券、生命保険の解約返戻金・・・
この記事では、個人再生(民事再生)をすると配偶者の財産はどうなるのか、家族にどんな影響があるのか、詳しく解説していきますね!
ぜひこのままお読みくださいね。
個人再生(民事再生)をすると配偶者の財産はどうなる?

個人再生(民事再生)とは、民事再生法に基づいて立てた再生計画を裁判所に認めてもらうことで、財産を維持したまま借金を約2割まで減額できるという手続きです。
自己破産のように財産を処分されることはないのでご安心ください。
(そのかわり、減額した後の借金は原則3年間で返済しなければなりません。)
自己破産をすると、生活に最低限必要な物を除いた財産(現在価格が20万円を超える財産。ただし、現金の場合には99万円を超える現金)が処分され、借金の返済に充てられます。
(そのかわり、借金の支払いは免除されます。)
さらに、申告しなければいけない所有財産は、個人再生(民事再生)を申し立てる本人名義のものだけであり、妻(配偶者)の財産は申告も不要です。
したがって、夫が個人再生(民事再生)をしても妻の財産が処分されるということはありません。
たとえ結婚していても、日本では夫婦別産制(民法762条1項)の考えが原則にあるので、それぞれの名義で持っている財産はそれぞれのものです。
個人再生(民事再生)の手続きをしたとしてもその原則は守られるので、基本的には配偶者の財産が処分されることはありません。
この先は「夫」が個人再生をすると仮定して、「妻」の財産への影響を解説しますね。
妻の保険解約返戻金はどうなる?
基本的に、妻名義の保険の解約返戻金(保険を解約したときに戻ってくるお金)は夫の財産としてカウントされません。
裁判所に申告すべき財産としての保険は「解約返戻金を受け取るのは誰か」という点が重要です。
解約返戻金は通常保険契約者が受け取るので、妻名義の保険であれば財産として申告する必要はありません。
しかし「名義は妻であっても実際に保険料を支払っているのは夫」という場合は、「その解約返戻金は夫の財産である」と見なされる場合があります。
妻と共有名義になっている自宅はどうなる?
個人再生(民事再生)では、夫が自宅の名義人に含まれていれば住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用できます。
必ずしも単独所有である必要はありません。
住宅ローンだけは債務整理の対象とせず、引き続き返済をしていくことです。
利用するには条件を満たすことが必須ですが、自宅を手放さずに済みます。
住宅ローンについてはこちらの記事で解説しています。

財産目録に妻の財産も登録するの?
財産目録とは、借金の返済に充てるための財産をまとめた書類のことです。
個人再生(民事再生)をする際には、これを裁判所に提出し、返済が可能かどうかを判断してもらいます。
基本的には夫名義のもののみ登録し、妻名義のものは登録する必要はありません。
- 所持金(現金)
- 預貯金(証券口座、FX口座も含む)
- 公的扶助の受給決定書や受給証明書
- 給与明細、源泉徴収票
- 退職金
- 貸付金や未収金などの求償金、過払金や敷金などの賠償金
- 積立金
- 任意保険の解約返戻金
- 有価証券(株券、小切手など)
- 自動車やバイク
- 時価評価額で20万円以上になる財産
- 不動産(土地、建物、山、畑など。共有や遺産分割未了のものも含む)
- 相続した財産 など
これらたくさんの項目を誤りや漏れのないように記載しなくてはなりません。
個人でできることには限界があるので、専門家である弁護士に相談しましょう。
個人再生(民事再生)では借金の大幅な減額を見込めるというメリットがあります。
しかし、「清算価値保障原則」(民事再生法174条2項4号)が適用されるため、所有している財産の価値以上は借金を返済しなければいけません。
だからといって、財産の名義を妻のものに変えたり、預貯金を移し替えたり、財産目録で虚偽の申告をするのは絶対にいけません。
いわゆる「財産隠し」は「免責不許可」となり、借金が減額されなくなることがあります。
最悪の場合、「詐欺破産罪」(破産法265条1項)に問われる可能性があります。
妻の給与明細も提出するの?
個人再生(民事再生)をする際に「申立書」を提出しますが、その中の「家計表」を作成するために妻の給与明細や源泉徴収票も提出することになります。
基本的には、妻名義の通帳や保険証券のコピーなどの提出は求められません。
ただし、不正を隠している疑いがあったり、不自然な点があったりすると提出を求められることがあります。
(夫名義の通帳から多額の引き出しがある、夫名義のものではない生命保険の引き落としがある、など)
ここで一度まとめますね。
- 妻名義の生命保険の解約返戻金は妻のもの
- 妻と共有名義になっている自宅は、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することで手放さずに済む
- 妻の財産は財産目録に登録しなくて良い
個人再生(民事再生)をしても妻や家族に返済義務は生じない

妻や家族であっても、保証人になっていなければ借金の返済義務はありません。
したがって、貸金業者が妻や家族に借金の肩代わりを請求することはできません。
貸金業者からの違法な取り立ての禁止は法律によって定められています。(貸金業法21条1項7号)
もし保証人でもないのに請求の連絡が来たら、警察に届け出ましょう。
借金も「夫婦別産制」
それぞれの名義で持っている財産はそれぞれのもの、という「夫婦別産制」の考えは、財産だけでなく借金についても当てはまります。
つまり、結婚によって生計をともにしていても、夫の借金は夫のものということです。
日常家事債務ってなに?
財産や借金について、原則「夫婦別産制」であるといっても、「日常家事債務」だけは違います。
日常家事債務とは、夫婦が共同生活を送るにあたり、日常生活に必要なものを購入した時の債務のことです。
具体的には、衣食住にかかる費用、医療費、教育費などがそれにあたります。
日常の家事に関する債務の連帯責任(民法761条)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
たとえば、夫名義のクレジットカードで食料品を購入した費用の返済義務は、同じ世帯である妻も負わなければならないということです。
賃貸住宅の家賃の支払い、足りない生活費を補うための借金についてもこれに相当します。
個人再生(民事再生)をしたら家族はどうなるの?

個人再生(民事再生)をする時、一番気になるのが家族や親戚への影響ですよね。
ここまでで、夫が借金をしても、妻の財産に影響はなく、また基本的には妻に夫の借金の返済義務は生じないと説明してきました。
ここからは、夫が個人再生をしたら家族の生活にどのような影響があるのかをさらに詳しく見ていきましょう。
家族の信用情報は傷つかない
信用情報は個人ごとに厳しく管理されているものなので、たとえ夫の信用情報に事故情報が登録されたとしても、妻や家族の信用情報が傷つくことはありません。
いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまった夫のクレジットカードはしばらく使えませんが、それとは関係のない妻名義のクレジットカードであれば、カードの使用やローンの利用も可能です。

家族カードは使えなくなる
個人再生(民事再生)により、夫が契約者であるクレジットカードに付帯する家族カードは使えなくなります。
クレジットカードの契約者の家族が追加で発行する同じカード
ただし、妻名義で契約しているクレジットカードについては、今まで通り問題なく使用できます。
ちなみに反対のケースで、ブラックリストに登録されたのが家族カードを使っている妻である場合はどうでしょう。
このケースでは、クレジットカードの契約者である夫に影響はないので、家族カードはそのまま使い続けることができます。
ローンが残っている車は手放す可能性が高い
個人再生(民事再生)は任意整理とは異なり、整理する債務を選べません。
まだローンの支払いを終えていない車の所有権は、ローンを完済するまでローン会社にあります。
したがって、ローンが残っている車は引き上げられる可能性が高いです。
給与の差し押さえが止められる
借金の返済が滞ってしまうと、貸金業者がお金を回収しようとして相談者さまの給与の一部を差し押さえてしまうことがあります。
しかし、個人再生(民事再生)をすることで、給与の差し押さえを防ぐことができます!
ここでは、2つの方法をご紹介しますね。
個人再生(民事再生)を申し立てた時に給与の差し押さえ中止も申し立てる(民事再生法26条1項2号)
給与の差し押さえが続くと日常生活に深刻な支障をきたす、再生計画を遂行するのが難しくなるなどの正当な理由があると裁判所が認めた場合、差し押さえ中止の命令を出してもらうことができます。
個人再生(民事再生)の開始決定により給与の差し押さえが中止される(民事再生法39条1項2項)
個人再生(民事再生)の開始が決定すると、給与の差し押さえは中止されます。
(開始決定までに1カ月ほどかかることがあります。)
また、気を付けたいことも2つお伝えします。
特定の貸金業者のみに借金を返済してはいけない
そもそもの話ですが、もし相談者さまが複数の貸金業者を利用していた場合、給与の差し押さえにより特定の貸金業者のみに借金を返済してしまうことは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」という違反行為にあたります。
借金には「債権者平等の原則」(複数の貸金業者から借金をしている場合、借り入れた時期や金額に関係なく全て平等に扱わなければならないという原則)があるため、偏頗弁済をしてしまうと破産時に免責されない可能性があります。
給与の差し押さえが中止されても、すぐに給与を全額受け取れるようにはならない
裁判所により給与の差し押さえ中止が認可されたとしても、この時点では、給与の差し押さえは「中止」されただけであり、「失効」したわけではありません。
個人再生(民事再生)の再生計画案の認可決定が確定してから、差し押さえられていた分の給与を全額受け取ることができます。(民事再生法184条)
再生計画案の認可決定が確定するのは、個人再生(民事再生)の申し立てから半年ほどかかることがあると念頭に置きましょう。
個人再生による妻(配偶者)や家族への影響は?財産はどうなるの? まとめ
今回は個人再生(民事再生)による配偶者の財産や家族への影響について解説してきました。
改めて、この記事でお伝えしたことは以下の通りです。
個人再生(民事再生)をしても配偶者名義の財産は処分されない
個人再生(民事再生)をしても配偶者や家族に返済義務は生じないが、日常生活のための借金には連帯責任が生じることがある
個人再生(民事再生)をしても配偶者や家族の信用情報は傷つかないが、債務者名義で契約していたクレジットカードの家族カードは使えなくなる
ローンを完済していない車は引き上げられてしまう。
個人再生(民事再生)は、自己破産とは大きく異なり、妻や家族の財産を処分せずに済む債務整理の方法です。
もし自己破産をするとなると、保証人だけでなく妻や家族への影響は避けられません。
そのほか、職種によっては就業できなくなる、年金を受け取れなくなる、車や自宅を失うことになるなど、デメリットがたくさんあります。
個人再生(民事再生)ならば、それらをクリアしつつ、家族を守ることもできます。
借金は放っておいても解決しません。
放置しすぎて自己破産しか選択肢がなくなる前に、弁護士などの専門家に相談し、あなたにとって最適な方法で最善の返済計画を立てましょう。
まずは無料相談から始めてみませんか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。